日付:2018年6月2日 

 ★~ ママチャリで10分くらいの立ち喰いそば屋へ遠征した。 ~ (3)

 

蕎麦

天かす付の<もりそば>  

 

 
  ★ 六軒目 ママチャリで遅い昼飯を【 尾久そば 】へ食べに行った
 
 
左寄せの画像  ☆ 食べた日:2018年5月12日
 ☆ 食べたそば:天ぷらそば(¥300)
 ☆ 所在地:北区昭和町2-7-1
 ☆ 目印メモ:JR東日本の「尾久」
   駅下車、目の前の明治通りを
   渡ると大きい看板が眼に入る
 ☆ 営業時間:毎日早朝~22時まで
 ☆ メニュー:かけそば\280
   天ぷらそば\300
 
 
 
 
 この【尾久そば】は、「佐奈田堂」さんのHPには記載はないので……、
 自宅からママチャリで10分くらいのところにJR東日本の東北本線「尾久」駅があり、駅前に立ち喰いそば【尾久そば】があることをネットで知り、はじめて行ってみた。
 はじめから驚かされたのは、かけそば¥280で、かき揚げ天そば¥300、ここのオーナーの値段設定のどんなセンスの持ち主なんだろう? かき揚げ天、¥20なんだ?
 
 天ぷらは「佐奈田堂」さんの言葉を借りれば「作り置きの天ぷらがデフォルトで冷えてるんで」、揚げたてではもちろんないが、焦茶色の出番を待ちすぎて干涸らびた天ぷらではない。少し湿り気を帯びていたが、薄い肌色で、中身はというと、なんせ値段差が¥20なのだから仕方がないけど、具は人参ばかりが目立ち、つなぎが多く、汁をたっぷり吸った小麦粉のつなぎは綿飴のように柔らかく、チープな味だが嫌ではない。蕎麦は当然、茹で麺でまったく腰はなかったが、なぜかそばの全体感としてはまったく嫌な感じを受けなかった。
 なぜなら汁がかなり濃く、その濃さは立ち喰いそば屋界でも特筆すべきもので、わたしのような下町の貧乏人(わたしの家は<醤油の家>と呼ばれている。<減塩>などは人間としても、商品としても堕落で、貧弱さを招き入れるだけだ)は醤油がなければ食事は美味しく食べられないと心の芯から思っているので、【尾久そば】の濃いそば汁の味は大変に嬉しかった。
 名古屋の友人と呑み屋で談笑しているとき、わたしの注文した『お新香』が出されたとき、わたしはなんの疑いもなく醤油をかけて食べようとした。即座に友人は『お新香の味をみてから醤油はかけろ』といったが、これでいい、これがお新香の下町風の正確な食べ方なんだと説明にもならない説明をした。
 ひとは、じぶんの好みの嗜好品が身体に悪いこと、害をなすことを知っていても止めないし、止められない。タバコだってそうだ。
 
 【尾久そば】は、店の外観、内観から推測すると、チェーン店ではなくたぶん個人営業の店だ。店内は、広々としていて、カウンターはすべてがイス席で10人くらいは腰掛けられ、カウンター、調理台はとても清潔な感じがした。店員さんは、真っ黒に日焼けした東南アジア系(?)の小太りの小母さんで、愛嬌があり、カタコトの日本語で「そばデスカ、うどんデスカ?」、店を出るとき「アリガトゴザイマシタ!」も素晴らしかった。
 
 東北本線「尾久」駅の一日の乗降客数は約10,000人に満たない。「日暮里」駅は(JR+京成+都営の舎人ライナーを合わせて)約の180,000人を超える。「尾久」駅は、そこに存在することさえ忘れられたまま時間の止まった都会の片田舎だ。けれども競争が激しい「日暮里」周辺の立ち喰いそば屋みたいにギスギスしていない。同じ立ち食いそば屋でも【尾久そば】は店の外観、内観から見てもまったく異質で、焦茶色の屋号の表看板の古さは堂々としていて風格さえ感じられる。
 
 立ち食いそば屋の店員がカウンターに置いてくれるその「そば」が、美味しいことが客にとってほんとに第一義の問題なのか?
 ……またバカみたいなことをいいはじめてしまって……、こんなことばっかりいってるから、オレは誰にも相手にされなくなってしまったんだ。WETだな、オレは。
 当然、食べる側にとってはそれが第一義の問題だ。だが【尾久そば】の店の外観内観とその雰囲気は、オレのそんなバカな問いを跳ね返してしまう力がある。こんな時代に、まるで過去への時間遡行を絵に描いたような立ち喰いそば屋が亡霊のように現存していること自体から、なぜか<ほっとした>と感じにさせられる。
 
 
        帰 郷     (中原中也)
 
     柱も庭も乾いている
     今日は好(よ)い天気だ
        椽(えん)の下では蜘蛛(くも)の巣が
        心細そうに揺れている
 
     山では枯木も息を吐(つ)く
     ああ今日は好い天気だ
        路傍(みちばた)の草影が
        あどけない愁(かなし)みをする
 
     これが私の故里(ふるさと)だ
     さやかに風も吹いている
        心置(こころおき)なく泣かれよと
        年増婦(としま)の低い声もする
 
     ああ おまえはなにをして来たのだと……
     吹き来る風が私に云(い)う
 
 
 海を渡って遠い国から来た店員の東南アジアの小母さんが笑顔で働いている姿をみると、日本もまだまんざらではないのかもしれないなァといった感じにもさせられた。
 庶民レベルの床屋談義の与太話で申し訳ないが、外国人就労者の在留期限とかそんな姑息なことばかりいって国を閉じてないで、もっと国を近隣の諸国に解放してゆくしか、たそがれ日本に残された道はもうどこにもないんじゃないの。国家を開いてゆくというということが、いつの日にか日本と近隣の東アジア諸国の底力にきっとなると思うんだけど、あなたは、どう思いますか?
 
 こんな感傷、心情は、<味>の内実へ含ませてはいけないのではないか? もちろん、いけない。
 でもオレは、過去の亡霊のように残存している【尾久そば】に迷わず一票投じる。『おまえはなにをして来たのだと……』と【尾久そば】の佇(たたず)まいの『年増婦』にwhisperで云われているようで。
 
 不思議な値段のかき揚げ天そば300円に深い満足感を、店のたたずまいと雰囲気に感銘を受けた今回のママチャリ10分間の小旅行【尾久そば】行は、大変に奇妙で懐かしい旅だった。何度も通いたい店だが、時間は有り余っていてもそんな自由に訪れることはないかもしれない。
 
 
 
 ★ 七軒目 京成線 新三河島駅近くの【 かみむら 】へ行った
 
 
左寄せの画像 ☆ 食べた日:2018年5月15日、6月19日
☆ 食べたそば:天ぷらそば(¥350)
☆ 所在地:荒川区西日暮里1-37-13
☆ 目印メモ:京成線の新三河島駅の改札を出て、
  すぐの右の「藍染川西通り」へ、すると見える
☆ 営業時間:[月~金] 6:00~18:30、
  [土・祝] 6:00~15:00
☆ カウンターに、全席イス席
☆ メニュー:かけそば\240・天ぷらそば\350
  ラーメンがありました \390 です  
 
 
「佐奈田堂」さんのご紹介・ご意見は、
 
 
冷凍麺のせいなのか、麺は案外ゴワついてます、
蕎麦に黒いツブツブが入ってますが、
これは蕎麦殻入りなのかな?
   食べた感じでもっとも近いのは、
   スーパーで売られている乾そば、
   それもイオンのトップバリューの乾そばにちょうど近い感じかな
   (乾そばは、自宅でよく食べるので案外詳しいです)
   天ぷらは駅そばらしい作りおきで、小麦粉が多いもの、
   しかし随分黄色いよなぁ、卵の黄身が多いのかな?
   まさか着色料とか使ってないよな、さすがに・・・
   汁は醤油ベースで、軽くカツオの風味が香ります(´∀`)
   セットの豚丼は旨いっすよ(゚∀゚)
 
 
 店主が差し出したどんぶりの中のそばをしばらく眺め、そば汁の色合い、そばの細さ加減、弾力の予想、かき揚げ天の柔らかさ加減……、これは美味いのではないか。そんな感じがして、慌てず天ぷらをそば汁の海にゆっくり沈め、少し間をおき、かき揚げの一端を崩し、かき揚げ天の油脂をゆっくり汁に馴染ませ、崩したかき揚げ天の切れ端をそばの上へ乗せ、口へ、食べた。予想超えて汁と油脂が甘く美味かった。
 たかが「立ち喰いそば」でも、「立ち喰いそば」に通う人びとは、各々じぶんなりの立ち喰いそばを食べる順序と完備をもっている。
 【かみむら】のそば、汁、天ぷら、すべてOK、ライトで、優しい味だった。「佐奈田堂」さんのいう通り、そばは茹で麺ではなく冷凍麺であったように思う。細さと硬さ(柔らかさ)の所感が茹で麺とは断然違います。現在、冷凍麺の技術の水準がどれほどなのかまったく見当がつかないが、我が家では、そばは乾麺(二人前¥100)でをパパスで買い、うどんは冷凍麺(5袋¥230)でライフで買う。うどんは、茹でうどんと冷凍うどんでは天と地ほど食感が違うからだ。そばもそれくらい進歩しているのだろうか。
 そば汁は薄目でほのかに出汁の香りがして、天ぷらは作り置きだが、例の焦茶色ではなく「佐奈田堂」さんのいう通り、そういえば黄色で、すぐに汁に溶けて柔らかかった。
 
 【かみむら】は、繁華な街の日暮里、西日暮里からやはり取り残されたような「藍染川西通り」の京成線「新三河島」駅(一日の乗降客:約9,000弱:平成28年度:京成線全69駅中47位。)の入り口近くに静かに店を開いている。お昼の時間は混み合いを避けて夕方五時近くに店の戸を開けた。常連客が二人ほどいたが、店内はひっそりとしていた。店員というよりご亭主だと思われるが、わたしより少し若い半ば白髪の五十を超えたばかりで、店内の静かな落ち着きはこのひとの人柄の落ち着きが映っている感じに思えた。
 
 わたしの通った大学はお茶の水にあり、夜学に通っていたので、昼間のわたしはアルバイトに明け暮れていた。
 いちばん長いアルバイトは「配膳会」といって、ホテルやデパートの食堂で派遣のウェイターとして働く仕事で、時給がよく三十半ばまでウェイターのアルバイトしていた。二番目は日比谷の「更科」という老舗のそば屋で2年半ほど働いた。三番目はお茶の水のパチンコ屋で、パチンコ屋といっても「麻雀パチンコ」といって、いまはもう無くなってしまっているが、スマート・ボールとパチンコを足して2で割ったようなパチンコだった。
 
 それぞれに愉しい思い出も失敗談もあるが、日比谷の「更科」で働いたときのことで、黒澤明監督の「七人の侍」に剣の修業の旅を続けている居合いの凄腕の剣客「久蔵」役を演じていた宮口精二さんが、よく食事に来たのを憶えている。
 日比谷の「更科」のあったところは芝居の「芸術座」に近く、これは想像だが「芸術座」への出演のあるときに日比谷の「更科」へ出番前の食事に来ていたのではないだろうか。いつも着物姿だった。お酒を一合、蒲鉾の板わさみたいな簡単なつまみ、最後は食事で暖かい丼物は注文せず、ざる蕎麦で、いつも一人で、映画みたいに無口で、宮口さんが喋っている場面の記憶はない。当たり前のことだが、映画のようにいつも緊張していつもピリピリしたような顔をしているわけでもなく、優しい表情のお爺さんで、一人酒を静かに呑んでいた。日比谷の「更科」は、近代的なビルの二階にあり、ビルはもちろん鉄筋コンクリートだが、店の暖簾をくぐると、店には、和風の長細い座敷があって、衝立で二畳強の広さにいくつか区切り、その区切られた小さな座敷の勘定場に近い方へ宮口さんはいつも坐った。
 
 なんでこんなことを書いたのかというと、ただ宮口精二さんのことを思い出したから書いまでだが、そば屋というと宮口精二さんの一人酒の姿、日比谷の「更科」の白いそば、朝のまかない飯の『座頭もり』という言葉が浮かんでくる。『座頭もり』とは、どんぶりに、そば、汁、刻みネギ、わさび、天かすを一緒に入れて、そのまま食べられるようになっている。江戸時代、そば屋さんが工夫した、眼の不自由な座頭さんにも、もりそばを食べてもらえる工夫をしたのだと思う。「更科」の女将さんにそのように教わった。また『座頭もり』なんて言葉を余所で使っちゃいけないよとも強く教えられた。20代のわたしが大変にお世話になった日比谷の「更科」の女将さんは、もうとうに他界している。
 
 いまのわたしは68才になろうとしているが、日比谷の「更科」で遭った頃の宮口さんと同い歳くらいの歳だと思う。
 年寄りにそば好きが多いといわれているのは、そばは作るのも食べるのも面倒臭くないからだ。歳をとると若い頃に較べると食事が日常の一大行事になる。面倒臭くなるのだ。わたしは硬いものは歯がもういけないのでダメで、餅は大好きだが入れ歯にくっついてしまうのであまり食べなくなってしまった。朝飯などつい抜いてしまうか、バナナとか○×ジュースとかが冷蔵庫にあれば、それで済ましてしまう。昼食は毎日簡単な麺類で済ましている。夕食は、毎夜奥方が作ってくれるが、奥方も同じ歳で、夕食のおかずを考えたり作ったりするのが最近は大儀そうになっている様子を見ると、わたしの方から「弁当で買ってこようか」などといって、コンビニやスパーの弁当などで初期高齢者は夕食を済ますことも週に2~3度ある。
 昼食の麺類作りはわたしの分担で、もう四年もその分担をこなしている。なぜ四年も続いているのかわからないが、麺類は作るのが男の手でも簡単だし、食後の鍋・食器あらいが麺類だと数が少なくて済み、楽だからだと思う。
 また、身体が動かすのが少しずつ億劫になり、心と身体の行動範囲も若い頃に較べたら格段に狭くなっている。それに用事がそれほど無い筈なのに、毎日なにかに追われているように忙しく感じる。だからいつも食事も簡単にと考えてしまうのかもしれない。
 
 日本蕎麦、うどん、ラーメン、夏はそれに冷や麦やそうめん、冷やし中華が加わり、冷たくして適度なローテーションでかわりばんこに食べている。刻みネギの他、大葉、ミョウガ、生姜、キューリ、大根、若芽、干し椎茸、とろろ昆布、挽き割り納豆等を添えれば季節感もちょっぴり味わえる。日々の暮らしの食事の差別化も、年寄りにはこんなところで丁度いい。
 そばはそれほど噛まなくともいいし、それでいて適度な喉越しも楽しめる。噛まずに済むそば(粉の練りもの)、鰹や鯖の出汁、醤油と少しの甘味、この三つの取り合わせは日本の古くからの食習慣、団子汁、すいとん、雑炊等の系列にはいるもので、食べ飽きてもそれなりに毎日食べられるから四年間も続いてきたのかもしれない。<切り蕎麦>は、粉を固めて煮るという古くからの日本の食習慣から出発して、立派に自立し、そば自体で客を呼べる日本の偉大な食べ物のひとつだということができる。
 初期老人夫婦の食卓へ、現在の若い人びとの食卓へ、風は吹きつけていないか。
 
 【2回目】 6月19日。 同じくかき揚げ天そば、¥350。
 わたしの【かみむら】の店主への人間観察はまったく見当外れだった。
 店を訪れたのは、昼の12時半くらいでひょっとして混雑していたら悪いなと思いながら玄関の戸を開けた。あのもの静かなかの店主は、カウンターに坐っている80才くらいの客のじっちゃんへ馬券の買い方をうれしそうにカウンター越しに教示していた。
 じっちゃんの方も、ビールの小瓶を注文しながら競馬新聞を手に、いわれた通りに買ったけど当たらないじゃないかと楽しそうに店主に文句をいっている。店主も負けずに競馬の基本は競走馬の勉強だ。細かい字読みにくいけど、馬をもっと勉強しないといけないといっている。○×レースは、何と何を狙ってるわけ? そっちは、どんなのいいと思うんだ……?
 【かみむら】は、京成線の「新三河島」ならではの、ゆっくりと流れ動く景色を色濃く内蔵していて、やがて消えていく時間の中にあるような、とてもいい店だ。
 
 
 
 ★ 八軒目 迷子になったが、日暮里の繊維街近くの【 浜田屋 】へやっとたどり着いた
 
 
左寄せの画像 ☆ 食べた日:2018年5月16日
☆ 食べたそば:天ぷらそば(¥300)
☆ 所在地:荒川区東日暮里4-19-1
☆ 目印メモ:店は、東日暮里の住宅街に埋もれる
  ようにひっそりと建っている。かなり見つけづら
  い場所。GoogleでGPS住所検索は必要!
☆ 営業時間:[月〜土]〜16:00、土日祭休み
☆ メニュー:・かき揚げ天そば\300 かけ\220
  外看板もなく店内にもメニュー、価格表も無い。
  お店だと解る目印がどこにもない。
 
 
 例によって「佐奈田堂」さんのご紹介・ご意見は、
 
 
  お店はカウンターのみ、
  元気な割烹着姿のおばちゃんが、一人で切り盛り
   お値段はかなり安く、でもボリュームもあります、
   天ぷらそば 300円(いつ行っても見事な掻き揚げが鎮座する天ぷらそば ウツクスィ・・)
   この野菜たっぷりの掻き揚げの、その大きさ、立体感はハンパないですが、
   これでたった300円なんですよね( ^,_ゝ^)
   ちなみにカウンターには天カスが置かれており、
   かけそば(220円)を頼めば、もれなくタヌキそばに勝手に強化改良できます
   そしてここの大盛りは100円+で2玉となり、かなり腹持ちよくなります
   汁は醤油ベースですが、口当りの良い薄味風味、
   そしてそばは細く黒めでちょっとボソッとした食感、
   個人的にはどっちかというと、ちょっと苦手な部類ですが、
   好きな人はきっと多い、いわゆる「家庭の味」といった優しい味なんです
   何より掻き揚げのボリューム感と値段がかなり(・∀・)イイ!!
   つーかコスパだけで言ったら、多分荒川区で、一番なんではないかと・・
   カウンターに常備されている天カスは取り放題、
   かけそばを頼めば、好きなだけタヌキに改造できますw
   自分の中ではこれぞ下町 立喰蕎麦の良心って感じですw
 
 
 今週は、楽しいママチャリ旅行になった。
 【尾久そば】、【かみむら】、続いて【浜田屋】、みんな好みの味で、そば、汁、かき揚げ天、店の雰囲気も満点だ。
 だが「浜田屋」へたどり着くのはとても困難だ。日暮里駅より鶯谷駅の方から探したら近いだろうと思ったが、少しは馴染みのある日暮里駅から勘で探したが案の定迷子になった。Googleでなんとかたどり着けたが、繁華な商店街を予想はしていなかったが、住宅街のなかに身をすっぽり隠すように建っている店だったので、見落としていたのかもしれない。【浜田屋】さんを探すときは、GoogleのGPS機能付の住所検索は必携。
 
 やっとたどり着いたと思ったら店員がいない。初老の紳士が一人、カウンターで大根おろしそばを食べていた。壁にはメニューの価格表もない。なにも貼っていないのだ、店の入り口にも。あ、オレ、間違えて民家に入って来ちゃったのかな、そんな不安な気持ちを起こさせる店だ。だがやがて、「佐奈田堂」さんのご紹介とおり、民家の小母さんがエプロンがけで調理場へ現れ……、
 
 「おそば? うどん?」
 「……、そば」
 「なに?」
 「天ぷら」
 「そのケースの、どれ?」
 「あ、この端の、かき揚げ」
 
 【浜田屋】さんは、【尾久そば】さんのように、入ってきた客を小母さんの姿と声で、客の不安感を一瞬にして吹き飛ばし安堵させてしまう独自な雰囲気をもった店だ。チェーン店ではこの感じはまったくありえない。
 
 もし、この【浜田屋】さんを見つけることができたら、その人は幸いである。そんな店の雰囲気とかき揚げ天そばの味だった。かき揚げ天そばは、優しく濃い味で美味しかった。今回の感想は、これでお終いです。
 しかし、メユーというか値段表だけは壁とかに掛けておいて欲しい。立ち喰いそばだから、メニューはだいたい判るが、どんな種類のメニューがあって値段はいくらかぐらいは客としてあらかじめ知っておきたい情報じゃないか。  
 ところで、廻ったお店はまだ八軒と数は少ないが、このへんで八軒から感じた印象があるパターンというか類型を持っているように感じられ、それをいっておかないとレポートにならないから、お座興に、立ち食いそば屋さんの現在の方向性というか志向性を分類してみた。
 
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【 ① 上向型 】  記憶のなかでいえば、たとえば、チェーン店の【小諸そば】系列がそのいい例で、【小諸そば】のそば、汁、かき揚げ天はかなりのハイレベルで美味しい。一般のそば屋さんにも劣らない品質レベルまで、そばの味を上向させようとする展開的な志向的を持つ店。集客のポイントを一点に絞り、現在を航海している。今回、食べたそば屋さんでいえば、【ももや】、【八起そば】だ。
 
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【 ② 旧来型 】  「美味いものは本当にgoodで、不味いものは本当にbadか、僭越は許されない!」
 不味い、速い、安い、それが立ち食いそばの元祖であり、不味さも美味さのうちだとする強攻派。しかし作り方は、<火力>、<粉もの>、<醤油>、<甘味>、<出汁>の組み合わせの原型「すいとん」や「雑炊」へと遡る、日本の<食>に関して深い根拠をもつ考え方の、そんな志向的の店。【六文そば2号店】、【一由そば】だ。実際、オレは仕事場が近いせいかその2店舗によく通っている。
 孫子に『一点突破、全面展開』という言葉があるが、この両店は味の間口を小さくとり、誰にとっても<うまい>味などに眼もくれず、じぶんの<うまい>を実現し、押し通している日暮里でも稀有な店だ。
 味の間口を小さくとったぶんだけ、【一由そば】はそばと焦茶色の天ぷらとそば汁の固有の味は異色で、濃く、深い。その固有味に馴染めないひとは、寄りつきもしないだろう。
 
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【 ③ ローカル型 】  比喩でいえば、毎日食べる家庭料理の基本の美味しいの<味>を大切にしている店だ。毎日でも食べ飽きない味だ。全体的にそばも天ぷらも、汁も大雑把な作り方だが、その大雑把さ<だいたいでいいじゃない>に、客は親近感を抱く。また味自体に敷居の低さを感じる。発行部数五百部に満たない地方の売れない同人誌的店だ。現在の味の差別化と均一化の激しい流れの中で、やがて消えていく運命のなかにある店舗かも知れない。だが、【家庭の味】は、都市の中流下層の人びとのあいだに現在でもとてつもない深い浸透力をもっている。一度は訪れても損はしない稀有な店だと思う。
 【尾久そば】、【かみむら】、【浜田屋】だ。わたしは、この店の雰囲気と味の一ファンだ。
 
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 最後に、女将さんに「お店の外側の写真、撮ってもいいですか?」と、訊いた。
 「どうぞ」
 「……あの、……ご馳走様です。……美味しかったです。」
 「…………」
 
 
 ★ 九軒目 三ノ輪【 長寿庵 】へ食べに行った!
 
 
左寄せの画像 ☆ 食べた日:2018年5月22日
☆ 食べたそば:天ぷらそば(¥340)
☆ 所在地:荒川区南千住1-15-6
☆ メモ:都電三ノ輪橋駅より日光街道
  の方へ徒歩2分
☆ 営業時間:7:00〜19:00、日曜休
☆ メニュー:かけそば\270・天ぷらそば\340
 
 
力の入った「佐奈田堂」さんのご紹介・ご意見を、
 
 
 最近ではあまり味わうことが出来なくなった、
 鯖節の効いた旨味とコクのある汁、
   立ち食いそばなのに、通常より蕎麦粉を多
   めにしているという、香り広がる太めの蕎麦、
   小エビが入った薄めのお好み焼き状の、如何にも立ち食いそばの王道的な掻き揚げも、
   きつねそばの油揚げも、非常に手作り感のするもので、
   旨味がじっくりと染み込んでいますね
   それが徐々にそば汁に染み出てきて、食べているうちに、味の深みが増していきます
   昨今の一般的な立ち食いそば屋、
   つまり天ぷらやフライなどのトッピングアイテムばかりが異様に多く、
   いかにも業務用で単調な味のお店とは、明らかに一線を引いてます!
   そんなこんなで、ここ「立喰生そば長寿庵」は、
   自分的には、毎日通っても飽きない味でして、
   食べるたび あぁー、これが昔っからの
   旨い立喰い蕎麦ってヤツなんだよなぁ (´ー`) フッ  ・・と、感心してますw
   随分前の日記でも書きましたが、個人的には、なんというか、
   荒川「立喰蕎麦キング」といった感じで、
   味だけで言ったら、このお店が一番好きなんですわーww
   補足ですが、
   ここ長寿庵でも、他所のお店と同様に、そばの代わりにウドンも選択できます、
 
 
 今週は、「立ち喰いそば」日和で、幸せな日々が続いている。「佐奈田堂」さんのご意見通り、
「長寿庵さんは「荒川立喰蕎麦キング」といった感じで、味だけで言ったら、このお店が一番好きなんですわーww」だった。
 そば汁は、出汁がちゃんと効いていて、濃く、適度に甘く、美味しかった。もちろんどんぶりの底が見えるまで、全部飲んだ。かき揚げ天ぷらは柔らかく、そばも「佐奈田堂」さんに、そういわれれば蕎麦粉が多い感じがした。出汁をたっぷり摂った濃い醤油色の汁が、下町の生まれのわたしには、なんといってもとくにうれしく、ご馳走だった。
 三ノ輪も繁華な街だが、やはり西日暮里、日暮里の繁華さとはとは肌合いが違う。どこかゆったりとしている。なぜなんだろうい。街の様子がぜんぜん違うのだ。
 
 「佐奈田堂」さんのいう荒川「立喰蕎麦キング」に、一票、投じます。
 
 
 
 ★ 十軒目 山手線 田端駅北口下、【 かしやま 】へママチャリを飛ばした
 
 
左寄せの画像 ☆ 食べた日:2018年5月28日
☆ 食べたそば:天そば(¥320)
☆ 所在地:北区東田端1-17-20
☆ 目印メモ:山手線田端駅北口か
  ら新田端大橋を荒川区方面へ、
  右階段を降りたところにある
☆ 営業時間:平日6:00~20:00
  土曜6:00~15:00・日祭日休み
☆ メニュー:かけそば\240
  天そば\320、もりそば\290
 
 
 現在のように洒落た新田端大橋に架けられる前は、荒川区方面からJR山手線「田端」駅へ行くにはラクダの瘤のような小山をひとつ超え、木道の旧田端大橋を渡らなければ田端駅には辿りつけなかった。
 その丘のてっぺんに、わたしたちのあいだで『鬼太郎の酒場』と呼んでいた古びていていまにも崩れ落ちそうな呑み屋が一軒あった。水木しげるの『墓場の鬼太郎』に出てくる妖怪たちが贔屓にしていそうな風情の酒場だった。仕事で最終電車で帰ることが毎日だったから、ラクダの瘤のてっぺんの高いところに一軒だけ夜中でも煌々と灯りが点いていて周囲に異彩を放っていた。二重回し(トンビ)を着た太宰治がフラリとガラス戸を開けて出てきてもちっともおかしくない戦後の遺物の呑み屋だった。
 『鬼太郎の酒場』とわたしたちが呼んでいたのが、上の写真の右奥にある「だるま食堂」だ。いまではウソのようにキレイに生まれ変わっている。ちょっと悪口をいいすぎてすいません。というより親近感をもっていたのです、怖くて一度も入れなかったけれど、あの瘤の上の壊れかけた呑み屋のたたずまいに。
 
 そして写真の左側がお目当ての立ち喰いそば【 かしやま 】だ。
だが、この【 かしやま 】は見つけるのが困難な場所にある。新田端大橋の下にあり、店は橋に二方向の空を塞がれている。行き方の目印は、田端駅北口から出て新田端大橋を「ホテルメッツ田端」まで歩き、そのホテルの脇に階段があり、それを降りれば目の前に写真のような茶色の建物がみえてくる。
 
 何度も【 かしやま 】の前を素通りしていて、入るのは初めてだ。
 お店、調理場はとても清潔で、客席の広さは二坪無いくらいで6~7人でいっぱいだろう。イス席はなく文字通りすべて立ち喰い。
 自動販売機に320円を入れ、天ぷらそばのチケット買った。
 出されたそばの器が小さい小丼で少したじろいだが、そばはGOODだった。
 30代の、たぶん経営者さんだと思うが若い旦那さんで、感じのいいご主人だった。
 
 新しい橋に代わる前まで、田端駅にはチケットの販売所の横にそばがあった。いまは「atré」が田端駅前にもできて、駅そばは消えてしまったが、そのたぬきそばは天かすが多く汁も濃く美味しかった。
 JR田端駅は、山手線でいちばん淋しい駅前で有名だ。駅の北側の荒川区に広大な操車場があり、南側の道坂下方面は駅からの長い切り通しが続き、駅前開発がままならないからだろう。
 
 
  (^_^) (^^) (^o^) (*^_^*) (^_^;) (^^;) ^^; (-_-;) m(_ _) (^_^)/
 
 
 味について語るのは素人も玄人もない。どんな意見でも述べてよい。だが作るのは違う。素人と玄人はある。けれどやはり素人の味についての感想だからそのつもりで聴いて欲しい。やはり味は固有の表現だ、強くそう思った。
 わずか十軒足らずの立ち喰いそば屋を巡っただけで生意気なことをいうなといわれそうだが、それぞれの立ち喰いそば屋さんが店(じぶん)のうまいを作りだしている。ただうまいだけを作りだしているのかというと、そうではないことも少しずつだがわかってきた。立ち喰いそば屋さんは、美味しさに加えて力価(りきか。は、生物学における濃度(活性)の測定法の1つである)も作りだしている。それは単純に汁の味の具体的な濃さということではなく、器に盛られたそば、汁、天ぷらの綜合的なパンチ(打撃)力みたいなものだ。力価は調理人の経験的綜合性であり、調理人の表現の固有性だ。そんな力価も立ち喰いそば屋さんはそれぞれ固有に作りだしている。
 もうひとつある。力価の対極の力(ちから)とまではいえないけれど、立ち喰いそば屋さんがもっている<浸透力>のある懐かしさ、自然さだ。
 立ち喰いそば屋さんは、この二つを丼に盛ってカウンターのお客さんに提出している。
 「美味くもなんともない」といった【六文そば二号店】、「干涸らびて焦茶色になった天ぷら」といった【一由そば】、その両店は他者を惹き込む力価(パンチ力)がある。胸を張って『これがうちの味なんだ』と商売をしている。わたしは、その「美味くもなんともない」と「干涸らびて焦茶色になった天ぷら」を再度食べたくてその両店に何度も通ってしまった。
 「佐奈田堂」さんの「荒川立喰蕎麦キング」といった【長寿庵】、メニューも価格表も無い【浜田屋】、新三河島の【かみむら】、東京の片田舎の【尾久そば】等、それらの立ち喰いそば屋さんには、毎日食べても食べ飽きない【家庭の味】の自然さ、親和性が隠し味となっている。
 最後に、立ち喰いそば屋とはなんなんだという自問だが、それは、力価と味の親和性、その両方を統御しているのが【 だいたいでいいじゃないか 】というイメージなんじゃないか、そう思えた。