日付:2020年12月7日 

 木村真悟さんへのインタビュー映像とそのテキスト化(1)です。

 

上野ストアハウスの小形知巳様、木村紀子様、木村真悟様に、インタビユーをさせていただきました。  
照明・撮影:市川敬太。場所:上野ストアハウス・事務所。  

 

 

 2020年10月13日、19時~22時を超えて3時間近く上野ストアハウス・事務所にて、劇場主の木村真悟様、奥様の木村紀子様、劇場スタッフの小形知巳様に、現在のコロナ禍の苦しいなかでの劇場経営の困難な課題について、また一人の職業人(演劇者)としてどのようにコロナの問題へどう向き合うのか、それらの様々な問題について木村真悟さんにインタビユーをさせていただきました。
 
 では、はじめます。
 ところが、市川敬太君のカメラの撮影準備が整う前に、わたしははじめての<講演・対談・インタビュー>ということもあって、もう上がりきっちゃって勝手に一人で話を進めてしまいました。そこからはじめます。
 なお、発言者とマイクの距離が遠かったせいで、おまけにわたし(菅間)は映像・録音の編集が素人で、発言者の音声のみを大きくできるのですが、その編集技術に追いつかなくて発言者の音声が小さいままです。ボリュームを大きくしてお聴きください。お詫び申し上げます。
 
 
● 菅 間   木村さんにお話していただきたいことのメモは木村さんにお送りさせていただきました。でも本日は、そのメモとは別に菅間の個人的なことの前提から話をはじめさせていただきたいと思います。よろしいでしょうか。
 33、4歳の頃、一冊の本を出していただいたことがありました。まだ若かったこともあって、本を出すということに憧れもありましたから、すぐに「はい、やらして下さい」って引き受けちゃったんです。その方は、故吉本隆明さんの専任の編集者さんだったんです。それで書きはじめたんですが、編集者さんに原稿を持っていく度に「あなたが一生懸命勉強したことを頑張って書いても他人は読んでくれませんよ。ただの知識自慢じゃないですか……」って言うところからはじまって……、ずいぶん叱られ、原稿を突き返され、悔しい思いをしたことを記憶しています。
 
 芝居でもなんでもいいし、歌でもなんでもいいんですけど、なんでその芝居にお客さんが興味をもってるくれるのか、なんでその歌を好きになったのか、なんでその歌手が好きなのか、つまりそこまで観客や読者の心を時代的な感受性として魅惑してしまう作品の核心・心棒まで分け入っていけないと「原稿を書いたことにはならないんでよ」ということを何度も言われてきました。途中で投げ出したくなったことも何度もあります。
 
 で、今度の研修会でほんとはどこまで行けるかまったくわからないんです。
 「新しい演劇」とか「コロナの問題」とかでもいいんですが、ぼくたちがこうして話していることが、聴いてくださる人たちの心に本当に届くためには、どうしたらいいんだろうか、それを1~2週間悩んでいたんです。ぼくたちの話(講演・対談=インタビュー)を聴いてくださるぼくたちの知らない人たちが、ほんとうはどういう言葉を待っているのか、そういう交互に交流できる言葉の場所がありえるとして、そこへ一歩でも近づけたらいいなと思うんです。
 ぼくと木村さんの<講演・対談=インタビュー>は、そういう言葉を心の底から待っている人たちの心へ風のように入って行けるのだろうか。そういうことがいちばん心に引っかかっていて、そこまでちゃんと、いやほんの少しでもいい、ほんの僅かでもいいんです、そういう言葉の場所へ近づいて話ができたらと願っています。でないと、なにもしたことにはならない、そんな思いでこの研修会をはじめました。
 もう一つ大切なことは、コロナ感染という暗い話ですから、楽しい<対談インタビュー>にしたいと頑張ることです。
 
 今度(コロナ感染症)のことでも、木村さんにお伺いしたいことを質問事項としては書いてみたんですが、木村さんと菅間の言葉から「これは解るな。そうだよね。いや、これは解らないな。いや違うと思うな」という判断を聴き手(観客)は必ずするだろうと思うんです。そこいら辺まで踏み込んでお互いに話し合っていければいいなと願っています。
 どうぞよろしくお願いいたします。
 
● 木村真悟氏   いやいや、菅間さん、いきなりもう最終章のまとめからはじまった感じがするんですが(笑い)……、
 
● 小形知巳氏   まだカメラ廻ってないっすいよ!
 
● 菅 間   お互い旧知の仲、知り合いだからということで木村さんをインタビューのお相手にセレクトさせていただいたんですけど、まず一つは、相当今度のことで劇場主としてご苦労なさっただろうな。どこでも同じだって言えば、どこでも同じなんでしょうけども……、
 
● 木村真悟氏   そうですね。劇場主としては菅間さんが最初に「前提ですけど」と仰ったこととまるっきり同じです。あの、これ、たぶん全員表現者っていうか、演劇やってる連中は問われたと思うんです。人と人が集まるということが前提に劇場、演劇ってあるじゃないですか、
 
 
カメラが廻りはじめました。
 
 
▼  第一話   録画時間:13分29秒
 
 
 現在のコロナ禍の問題は、小劇場の経営者にどのような壊滅的な打撃を与えてきたのか、その辺のところから木村さんのご意見を聴きくことから、はじめました。
 
 

 
● 木村真悟氏   ぼくもまるっきり同じですよ。たぶん表現者として、というか演劇やってる連中は問われたと思うんです。人と人が集まるということが前提に劇場、演劇ってあるじゃないですか。詩人とか小説家とはちょっと違うと思うんです。この問題をじぶんの中で内面的に消化して、様々な事象と絡めて、じゃ、じぶんはフィクションをどう書こうかとか、この状況で言葉がどう紡ぎ出されるのだろうかとかいう詩人というのはもちろんいると思うんですけど、(稽古場、公演場所の確保は演劇にとって必要不可欠な)具体的な問題なんです。集まることを禁止されたんだから、この状況でいったいなにを表現するんだろうかっていうことは、全員、問われたと思うんです。問われてないとしたら、ちょっとやばいなとは思いますよ。
 
 最初にバッシング受けたじゃないですか、「モリエール」だっけ? 「モリエール」がバッシング受けたのは……、受けたときに『 小劇場協議会(http://jipta.jp/) 』っていうのができて……、この状況に、どう立ち向かおうかっていうことで、政府に言われてからガイドラインを作るんじゃなくて……、いままでなかったんです『 小劇場協議会 』っていうのは。だいたいうち(上野ストアハウス)と同じくらいの規模で、声をかけたのが本多さんなんですけど、本多さんのところは商売を守んなきゃいけないから、(ここは、あとでカットして下さいネ)息子さんが声がけするっていうことで、あそこは情報が入ってくるときがあって、政府筋から言われてからガイドラインに従いますじゃなくて、先にそれ(ガイドライン)、立ち上げなきゃ格好悪いんじゃないかっていう声かけだったんですね。それはぼくも賛同したから入ったんですけど……、
 
 「モリエール」問題が起きたときにバッシングがあったんですよ。「お前らなんてことするんだ」っていう、その会議ってホント惨憺たるもので、もうイジメですよ。だけど皆んな興奮してるから、その頃ホント凄かったですよ。「お前等が、そういうことをするから小劇場全体が白い目で見られてるんじゃないか」っていうようなイジメです。だけど、皆んなイジメてることに気がつかないんです。皆んな興奮してるから、誰が悪いわけじゃないんですよきっと。そのあたりを振り返ってみると、演劇がどうのこうのとか、表現がどうのこうのとかというよりも、非常に保守的でしたよね。
 
 ともかく基本的に劇場で商売をしている人だから、ぼくもそういう意味じゃ(劇場で)商売をしてるわけですから、商売ができなくなるということに対するじぶんたちの利権をなんとか守らなくちゃいけないということで、いま考えればくだらない話をしてました。でも、それ、変わるんですね。そういうこと言っててもしょうがないと。(コロナの感染者は次々と)出るんだから、絶対に。出たあとの対応を格好良くする方に論を変えていかないと、どこが出したとか、誰が悪かったとか言ってたってしょうがないんじゃないかっていうふうに論調が変わりまして、いま少し落ち着いています。いまほとんど諦めムードです。とにかく風が過ぎるまで待たなきゃいけないというふうになってます。で、いろいろ細かい人間の反応が見れて面白かったですけどね。
 
 ぼくはZOOM会議すると、ほとんど怒ってて、ZOOMが終わったあとに「それ以上言わないでくださいよ」って電話がかかってきましたけど……、でもいまはもう下火で「待つしかない」っていう、面白い話ですけど、みんな守ることに必死になっていて、守ったってコロナはどんどん感染するわけだから、(舞台の)前面(まえつら)から最前列のお客さんまで(の距離を)1メートル50にした方がいいのいか、2メートルを守った方がいいのかっていう話を延々と皆んなするから、ぼくなんかもホント切れちゃって、その50センチで感染は減るわけじゃないんだから、違う話だと思う。
 
 この状況、ほとんど『ペスト』と同じ世界です。怖い。や、そんなことに演劇やってる人たちはならないと思ってたんだけど、やっぱりなっちゃうんですよ。まるっきり『ペスト』の世界になっちゃうんですよ。だから、みんなは悪者を作ることで安心しようと思っちゃうんですよね。怖ろしい……、まだ終わってないですけど。その当時は、このことに関したら、もう怖ろしいことでしたよね。
 具体的な話をすると、うちのスタッフの方がよく知ってると思うんだけど、うち3月末ぐらいまで営業したんだっけ?
 
● 小形知巳氏   3月末までですね。
 
● 木村紀子氏   ちょうど3月31日から……、
 
●稲川実代子   菅間さん、上野ストアハウスの劇場主であり、ストアハウス・カンパニーの主宰者である木村さんとか、その奥様で、伴に何十年もストアハウスを守ってきた紀子さんで、とか、それをまず紹介しておかなきゃ……、
 
● 菅 間   それ、いつ言おうかと、(全員、笑い……)
 
● 木 村   いま、あの、すいません、紹介をされる前に喋ってしまいましたストアハウス代表の木村(真悟)です。一緒にやってきているうちのマネージャーの木村紀子です。うちのスタッフの小形知巳です。
 
● 小 形   小形知巳(オガタトモミ)です。(劇場)スタッフです。
 
● 全 員   よろしくお願いします!
 
● 木 村   いちばん大切なところは、ゆっくり、あれ、しましたよ。で、あの、いまのでだいたい一番目のあれ(設問)には応えたつもりです。
 
● 稲 川   なんかね、やたら、この人が、だいたい質問事項とか言葉書くんですけど、あたしに言わせると、人にもの訊くのにたいてい文語調なんですよね。会話体にしてよって。で、あたしに司会やれとか言ったって、こんなね理屈こねたような文章、勝手に直しちゃったりよくするんですけど、でも、いま、はじめにお訊きしたいことの質問に応えていただきましたよね、
 
● 木 村   一番目に応えたつもりです。
 
● 稲 川   そうなんですよ。だから、それを、その時にでも、たとえば、いま、このあとに訊く、コロナ感染拡大防止対策問題、たとえば劇場に導入せざるをえなかった様々なコロナ感染拡大防止対策のために必要だった機材だとか消毒の設備とか、いろんなこと、たぶん大変だったでしょうねって、いかがでしたでしょうか、あれも、これも……、
 
● 木 村   最初はものすごく不足してるじゃないですか、それらを買い集めるのに、たぶん、あちこち走り回ったですね、
 
● 紀 子   3月、マスクは無いわ、消毒液は無いわ、ハンド・ソープすら無かったんです。
 
● 稲 川   なんにも無いですもんね、
 
● 紀 子   けっこう自転車で(走り回った)、3月は、あ、一個、公演中止になった。早稲田のミュージカル研究会だったんで、学校から圧力があったんで止めざるをえなくなったんで、
 
● 木 村   「圧力」という言い方は変だけど、
 
● 紀 子   でも学校が、
 
● 木 村   学校がね、「止めろ」と言ったという、そういう事件が3月頃あったんです。
 
● 稲 川   「圧力」、言葉変えておきます。
 
● 全 員   (笑い)
 
● 木 村   中止命令がくだって、可哀想でしたね、学生たちが泣きながら、一年間準備してやってきたことなのに、できなくなりましたから、それが一つ潰れて……、
 
● 紀 子   3月は全部あったので、3週間あって、けっこうな量の消毒液が(必要で)……、
 
● 菅 間   だから劇場としては、限りなく利益率って少なくなっちゃうでしょう、そういう……、
 
● 稲 川   設備投資だけで感動しましたけど、あの、サーモグラフ、体温測るやつ、
 
● 木 村   あれはですね、小劇場映像・クラウドファンデイングというやつで、あれはサンモールの佐山さんがお声がけして、けっこうお金が集まったらしんですよ、それで配分されたんで、じゃ買おうかということで買ったんですけど、じゃないと非接触型のやつだと、こうしないといけないじゃないですか。それじゃお客さんも大変だし、やる方も近づかなきゃいけないから、じゃ準備しようということで、したんですけど、でもあれ、やっても、これはオレの話だけどね、オレ自分が何度か近づいてみるんだけど、近づいてみる人もいるんで、近づかなくとも解るんで、お願いしますから素通りして下さいよって、
 
● 紀 子   一回立ち止まってくれればいいんですけど、近づくとね高くなっちゃうんですよ、
 
● 稲 川   ああそうなんだ。さっき近づいて見ちゃった。
 
● 小 形   設定が1メートルくらいってなってるんですけど、字が見えないひとはどうしても近づくから、どんどんどんどん……、
 
● 木 村   自分の体温知りたいんだよね、
 
● 小 形   でも7度5分以上あったらピーッって音がして、その人録画されたりするんです。
 
● 稲 川   うちは、ここ(脇の下)に挿んで5分測るやつです。何十年前の……、
 
● 市川敬太   ちょっと一端、ここで(カメラ)止めますね、じゃ、
 
 
 
★ 照明・撮影:市川敬太。
★ 映像音声のテキスト化作業:西山竜一(タテヨコ企画)、村田与志行(ボタタナエラー)。
  照明・撮影、音声のテキスト化、大変にお疲れ様でした。ありがとうございました。
★ 映像・対話編集雑務:菅間勇。
 編集の方針なんてありません。音声言語は時間の流れみたいなものと同じで、話し終わった瞬間には音声は煙のように消えてしまっています。けれども、会話に参加して下さっているみなさんのなかには共時性が共に流れていて、それを大事にしました。でも、一人ひとりがテキストを読む場合は一人の時間のなかで黙読されていくものですから、その相違は少しは勘定に入れて編集しました。また会話は主語、目的語の省略が激しいから捕捉説明を付けないと解りにくいところには説明を付けたり、内輪話に花が咲いているところは大きく省略しました。ただ意味のある会話と無意味な会話との分別はつけませんでした。その二つは等価なものとして考え編集しました。意味ある会話の流れであっても知識の披瀝みたいになっているところは(たいていは菅間です)大幅に省略し、内輪話みたいなものであっても現在からの切実な光と影が射していると思える箇所は省略せず、そのままテキスト化しました。
 当然、映像内の発言者の会話の意味・意向を変えることは一切しておりません。
 
 
 
   ★★★★★★★★★ ☆ ★★★★★★★★ ☆ ★★★★★★★★★
 
 
 
(注1)映像を10分前後に分割して編集しました。これはサイトの容量上の問題です。
(注2)私事になりますが、はじめてで最後の本を編集して下さった編集者(小関直氏が本年11月11日、 お亡くなりになりました。小関直さんは、日本でも最優秀な編集者のお一人であり、わたしにはとても怖くて優しい編集者さんでした。ご冥福をお祈りいたします。
 
 
 
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