日付:2020年12月7日 

 木村真悟さんへのインタビューも中盤にさしかかって

 

上野ストアハウスの小形知巳様、木村紀子様、木村真悟様に、インタビユーをさせていただきました。  
照明・撮影:市川敬太。  

 

 

 以下の文章は、10月13日(火)、木村真悟さんへのインタビューの翌日にわたしが木村さんへ送ったメールと、木村さんからのお返事です。
 
 
    ▒ ▒ ▒ ▒ ▒ ▒ ▒ ▒ ▒ 
 
 
 昨日はインタビューというより「雑談トーク」になってしまい、大変に疲れましたが、こんなに疲れたのは久しぶりぐらいに疲れました。でも、申請書に書いたような事を始めることに、気が重く、気持ちはブルーになっていたんですが、こんなに楽しいもの(トーク)になるとは想像がつかないほど楽しみました。木村さんのお陰です。
 (トーク)映像はこれから見ますが、木村さんもぼくも、「これから話すことは全部カットしてね」の連続技で、配信映像などできないのではないかと思われるほど破格のぶっちゃけトークとなりました。
 ぼくは、感染症の病原菌としてのコロナが、人間の心の鬱や過剰防衛心をこれほど引き起こすほどの力を持っているのかと、少し驚くほどでした。コロナには、身体を犯す機能と、心を侵す機能があるんだということを、改めて思い知りました。
 決っして「雑談トーク」として高度に仕上がっているとは少しも思っていませんが、木村さんの機関銃のような話しぶりに、少し疲れ、感動しました。
 こんなことをはじめて、こんな楽しくなるなんて、ウソみたいです。
 
 
 菅間 様
 こちらこそありがとうございました。
 菅間さんと話しながら、改めて、対面しながら人としゃべることが大事だということを感じました。
 今後ともよろしくお願いいたします。
 木村拝
 

中央画像

ストアハウスの広い事務所で、豪快に機関銃のように語り続けてくださった木村真悟さん(中央)    

 
 
  ▼ 現場からの声(1) 今回、撮影等を担当しました市川敬太(劇団ステア)です。
 
 不慣れなもので、無駄にてんやわんやしながら撮影していたもので、あまり皆さんの話をきちんと聞けていませんでした(笑)。
 しかし、随所で考えさせられたり、楽しませてもらったりしました。なによりも、二時間強のインタビューでしたが、とにかく皆さんの話が尽きない、というのが印象的でした。カメラを一時止めるタイミングさえ掴めず、その結果勝手にてんやわんやしていました(笑)。
 有意義な楽しい時間に付き合わさせていただき、感謝します。
 
 
  ▼ 現場からの声(2) 稲川美代子(馬鈴薯堂)。
 
 4月の始めから入院していた兄嫁が20余年の闘病に力尽き、5月始めに亡くなりました。コロナ騒動の真っ只中の入院で、兄や姪の面会もほとんど許されず、臨終にさえ立ち会えなかった二人を思うと、言葉がありませんでした。憔悴しうろたえている兄を、どうしてあげることもできなかった。
 6月の公演を中止せざるをえなかったこともとてもせつないことだったけど、思えば兄嫁の死が、私の老人性鬱にコロナ鬱を呼び込んだようで、柄にもなくついこの間まで日々鬱々としていました。なーんにもする気が起きない、なーんにも食べたいものがない、家の外に出たくない…等々。けれど日々やらねばならないことは沢山あるし、仕事もたまに入るし、一人になってしまった兄のサポートもあるし…で、なんとか尋常を保っていることができました。
 そんなこともあって、菅間が企画した今回の研修会も、ホントは、そんな大変なことできるのかい? と思っていましたが、彼の毎日の懸命な食い下がり、諦めない、しつこい努力の姿を見ていて、やれるところまでやればいいよと、考えるようになりました。
 結果、敬太クンの尽力と吉嗣さんの助言のおかげで、1回目の研修会、上野ストアハウスの木村真悟さんのリモートインタビューが実現しました。2時間以上のインタビューでした。というより、雑談トークだった。主題は「新型コロナ感染拡大防止対策について」なんて、肩こりと頭痛が起こりそうなものでしたが、木村さんの説得力のあるお話に聞き入り、頻繁に出るジョークも楽しく、あっという間の2時間でした。カメラマン敬太クン、前日から緊張して疲れたでしょう。ありがとうございました。
 数時間後、私は気がつきました。ああ、これなんだなと。私だけではない、コロナのせいで心身が不安定になっているのは。会いたいのに会えない、話したいのに話せない、気の向くままに動けない。鬱と言わないまでも、そんな不自由さや無力感も、リモートというこんな形で会えて話せれば、心が解放され、不安が和らぐのかなと。私の老人性鬱もコロナ鬱も少しだけ立ち去ってくれたようです。
 この研修会はあと3回予定しています。私にはさっぱり分からないICTとやらは、回を重ねれば少しずつ進歩していくと思います。コロナ禍で今後どんなふうに芝居を続けていくのか、続けられるのか…正解なんか出ないだろうけれど、皆で考えて、楽しみながらの研修会ができるといいなと、思っています。
稲川ももう少しだけ、元気でいますよ
 
 
  ▼ 「研修会にZOOMで参加してくれた人々の感想」(1) 比嘉麻琴(ソラカメ)
 
 
 ありがたい研修会にZOOMで参加しました。
 しかし、マイクの問題かとは思いますが最初の1時間は音声がほぼ割れてて、もごもごフガフガした音が流れてくるくらいで、鮮明に聴き取れた単語は「小劇場」と「コロナ」と「鬱」でした。
 聞き取れたのはそれだけだったけど、それに全て詰まってるような気がしないでもないな、とも思いました。「小劇場コロナ鬱」あ~少なくとも私はそっちかなぁ、と。でもコロナじゃなくてもわりとネガティブな方なので、コロナのせいにすることで正当な言い訳が出来てるような気もしているのですが……。私みたいな小娘よりも苦しんで戦ってる人はきっとたくさんいるんでしょうけれど……。
 後半の1時間ほどは、研修会でZOOMを手配してくれた敬太さんが通信機器を変えてくれたので、いくらか聞き取れる部分が増えましたが、「お金」「バイト」「献立考えるのめんどくさい」などという言葉が聞こえてきてあ~わかるかも~と感じたりしてました。
 で、一番印象的だったのは「変態を探す」というくだりでした。人を殺しそうな人が演劇をやれば面白いんじゃないか、とか。「変態」をどうにかできるのは「まとも」な人間なんじゃないか、とか。
 なので、「変態」についてめちゃくちゃ考えてました。私は演劇人の中では「変態」じゃない方だと思うんですが、就職したり結婚したり子育てしたりお洒落なバーに通ったり車を買ったり家を買ったり投資をしたり社長になったり、してる友達とかを見てると、そのどれもしてない私はその方々からは「変態」に見えてるのかもしれないなぁ、と考えたりもします。人生は人それぞれだから好きなことをすればいいと思うのですが、やはりカツカツの生活で演劇の世界にいる私を見て「仕事なのか趣味なのかわからない」と言ってくる友達がいます。いくら自分自身が仕事だと思ってやっててもマジで言い返せないのが悔しいんですが、彼らの整理(ママ)でそう思うのなら仕方ないよなとも思います。そんな時、意外と熱くなれない自分に対して、そんなに演劇に執着もしてないのかなと感じたりもします。「コロナだから仕事がない」と言えば格好はつくけど「コロナじゃなくても、もともと食えてない」私に友達は「変態」を見る目で接してきます。全ての友達がそういうわけではないのですが。でも私は毎日決まった時間に職場に行って仕事して、という生活をしてる自分が想像できないから就職したいとも思わないのですが(だからやってる人たち本当にすごいと思ってる)、私に「仕事なのか趣味なのかわからない」と言ってた友達が「仕事」と認めてくれる領域に達した時には演劇のために早起きもしなくちゃいけないだろうし寝る時間もなくなったりするのかもしれない、とか考えます。でも寝る時間は今自分にとって譲れない時間だからなぁ……とも思って、果たしてそのような多忙な生活を心の底から望んでいるかと言われたらそうでもないです。でもこのままでいいとも思ってなくて、自分にとっての充実感ってなんだっけ、って最近はフラフラしてる気がします。演劇の世界で私より「変態」はたくさんいるし、なんなら演劇やってない友達の中にも「変態」はいて、演劇やってほしー、と思う「変態」もいます。そういうのに出くわすたびに落ち込みます。「変態」に憧れてるんだと思います。だから「コロナのせいで仕事がない」うちに、もっと自分のビジョンが楽しいことで埋まるように、色んな妄想をしてたほうがいいんだろうな、って思います。
 でも私は人見知りです。ものにもひとにも熱中することがあまりありません。誰かに意見したり反論したり、議論することがあまり好きではありません。怒られるのも嫌いだからなかなか挑戦もしません。自分の意見に反論されるのが嫌だから、あまり意見をしません。そうしてるうちに意見を持つこと自体少なくなりました。周りに流されることが増えたし、自分から流れに行ってんなとも思います。普通にそれだけだと「あ~自分クズだな~」って思いますが、実はそんな自分がそんなに嫌いではありません。
 それがデフォだとしたら、めちゃくちゃ稀にコミュ力を凄まじく発動する時があります。人間大好きおしゃべり大好き熱く語り合うの大好きみたいな。行動力もえげつない。そういう時は何に対してもやる気がすごくて、暑苦しくなれます。怖いもの知らずになれます。「いま自分すげぇ無敵なんでもこい」状態になることがあります。だからたぶん、やればできる子なんだとは思います。でもそのトリガーがなんなのかはわかりません。年間通してクズモードの時間が大半なので、キラキラモードを増やして行けたらいいなとは思うのですがいつ発動するかはわかりません。自分の意思とは関係なく突然現れるので、なろうと思ってなれるものでもありません。だからたぶん自分の中にもう1人の自分を飼ってて、そっちはおそらく「変態」なんじゃないかなと思ってます。コロナのおかげでさらに封じ込みがちになった「変態」の部分が、うまいこと操れるようになれば、好きなことが増えるのだろう、と思ったりしました。
 こんなにフラフラしてる私も、まだ演劇を辞めたいとは思ってないようで、いさせてくれるならまだいたい、です。でも急に愛想尽かす日が来ないとも言えません。まだ24歳、もう24歳、の間でグルグル考えてしまいます。遅れてきた思春期なんかなーとか思ってやり過ごしたいと思います。
 約2時間の「研修会」という名の、先輩方のありがたいラジオを聴いての感想文を書くつもりが自分の話になってしまいました。未熟な私が「変態」についてたくさん考えたお話でした。
 
 
 
  ●  はじめてのインタビューのお相手が木村さんだった  菅間勇
 
 
 木村さん(奥様の紀子様、小形知巳様もいてくださり)とのトークは大変に面白かった。
 どこが面白かったというと、わたしの木村さんへ提出した「木村さんにお訊きしたいこと」というメモが、木村さんによってみごとにアッという間に木っ端微塵に吹き飛ばされてしまったことだ。これは、楽しい体験だった。
 トークがはじまってすぐに木村さんのトークの圧力のある力感におされてジリジリとわたしの「メモ」が後退せざるを得なくなってゆくのを困ったなという思いを抱きながらわたしは聴いていたが、考えてみれば「会話・対話」の本質というのはそういうもので、喋った瞬間には喋った言葉は(その意味は)声とともに虚空に消えていき、次の瞬間には座で行われいている話題を深く盛り上げようとしながらより開放された地平に話題を瞬時に飛躍させてゆく。そんな雰囲気をこしらえてくれたのが木村真悟さんであり、奥様の紀子様、そして小形知巳様でした。現在の困難さなのなかで、劇場経営で大変なご苦労をなさっている木村さんと奥様のお人柄を見させていただいた思いだった。聴き手としては正直とても助かりました。
 稲川実代子が「(コロナ禍)のなかで、食事を作るのがもう嫌になっちゃった!」という発言に当意即妙に反応して下さった奥様はさっそくごじぶんのコロナ禍での食事の話をはじめ、話の途中でまたコレラの話に進展していったり、めまぐるしい回転のなかの話し合いでした。これが本当に楽しい話し合いで、よい体験をさせていただきました。ほんとうに楽しかったです!
 またいつか、お三人とお話しをしたいと考えています。
 
 
 以下はおまけです。故吉本隆明さんの『お喋りの文体』についての話を想い出したので抜粋・引用させていただきます。

吉本 隆明  ほんというとおしゃべりの文体、そいつが見つからなきゃダメなんだっていうのが僕の感じ方なんです。だからじぶんが従来書いていることを書く寸前に、その止めて、その材料をしゃべってるみたいなの、そういうのはもちろん、それだったら、書いた方がいいんだってと思います。つまり物書きなんだから書いた方がいい。そういうのいつもつきまとっていて、うしろめたいし、さればと言ってどっかにお手本がないかっていいますと、「これはいいぜ」っていうのはなかなかない。そういうふうに見ていくと、このごろ学者先生は、こういう所(サージュ・1984年2月号・巻頭鼎談・糸井重里+浅田彰+中沢新一)に出しゃばってきて、言ってるでしょ。口調はくだけたように見えるんだけど、本当は体が笑ってないっていうんでしょうかね。つまり下手な芝居見てんのとおんなじで、科白だけおもしろおかしく言ってんだけど、ほんとは体の演技が笑ってないんだから、ちょっと見ちゃいられねえみたいなのがあるでしょ、それとおんなじような気がするですよ。この人たちは、なんかね、新しいこと、くだけたようなこと言ってるし、本当は片手間にやってるんだと思うんですよ。つまり、くだけてみせんだけど、本当なら日常会話で誰れかプライベートにしゃべってるときに言ってることね、それを記事にしているだけで、それはダメだと思うんです。僕らが書くべきことをこういう座談会でしゃべってるとおんなじでね。
★(『大衆としての現在』 語り:吉本隆明×聴き手:安達史人。北宋社:1984年11月刊 

 対談とか、インタビューというものは、日頃日常的にやっているから簡単そうにみえて、でも大変に難しいということを痛切に感じました。芝居の台詞も含めておしゃべりの文体をちゃんと考えないといけないな、そんな思いを強くした話し合いでした。
 
 
 
  ★★★★★★★★★★ ☆ ★★★★★★★★★ ☆ ★★★★★★★★★★
 
 
     ★ 新しい文体をみつけることの試行錯誤 吉本隆明さんから聴く
 
 
     ★ ちょっと小休憩しませんか~映画『Mr.ホームズ:名探偵最後の事件』へ
 
 
     ★ aboutの頁へ戻る。