日付:2020年12月21日 

  最後に保健所に電話をかけてみました。

 

クマモン。  

 

 
 【 1 】 馬鈴薯堂特有の<三密>の稽古について
 
 
 わたし(たち)の身の回りの友人、俳優さんたちにはいまのところ幸いにもコロナの陽性者は出ていない。しかし馬鈴薯堂特有の【三密】の芝居の稽古をはじめようとすればわたしたちの稽古や公演に臨む身構えはだいぶ変わってくる。
 
 そこで、区役所と保健所に電話をして、コロナ感染拡大防止対策について訊いてみた。感染拡大防止の詳細なガイドラインが欲しいが出向いて行けばパンフはいただけるのでしょうかと訊いてみた。両者からそういうパンフの配布は無く、厚労省・文科省のHPがあるからそこで調べてほしいと言われた。保健所の職員さんが現在多忙中だとわかっていたが一つだけ質問(相談)をさせていただいた。
 
『 わたしたちは10人ほどの人数で芝居を作っている小集団ですが、稽古場内で稽古途中に(37.5℃を超えた)新型コロナウイルスの陽性者らしい俳優・スタッフが発生した場合、陽性者らしいもの、その周囲に付き添っているわたしたちは、どのように判断をし公的機関(お医者さん等)へ連絡をとればよいでしょうか、教えて下さい。』
 
 実際に稽古現場でそのような事態が発生した場合、わたしたちの思いつく対処方法を先に述べ、間違っているところがあればご指摘をいただき、通報の方法を教えて下さいと述べた。
 
 馬鈴薯堂の稽古場は【三密】の状態にある。約20畳~40畳くらいの部屋で、10人前後の俳優が芝居の稽古をしている。(現在は貸し出される部屋の定員は、従来の定員の半分程度におさえられている)。
 稽古時間は19時から21時半の約2時間半ほど。1時間に10分ほどトイレタイムを兼ねた休憩をとり、その間換気のため窓を開放する。全員、稽古場に出入りするときは検温、手指の消毒、うがいを実行している。稽古場では、俳優も、そこに同席しているスタッフ等もマスク及びマウス・ガード着けて飛沫を飛ばさないような対策をとっている。
 
 電話で話すことができたのはここまでで、実際には馬鈴薯堂の俳優さんたちの稽古は、汗をびっしょりかくほど身体を動かし、発声する音も大きく、唾液感染が起こり易い状態というより、大袈裟にいえばボクシング・ジムのボクサーさんたちの打ち合いの練習みたいな激しい稽古をしている。こんな状態の稽古場内で陽性者が一人出たら、全員が感染しない方がおかしいという稽古だ。電話ではそれは言わなかった。笑い話にされてしまうからだ。これは、馬鈴薯堂の稽古特有の問題だが、どこの小劇団でも多少の差はあるだろうが、ほんとうは同じような小さな貸し室で多人数で激しい稽古をしているに違いない。
 
 仮に陽性者(とおぼしき人)が稽古場内で出た場合、稽古場を提供してくれる(わたしたちは公共の安価な施設をよく利用している)その施設の管理責任者に事情をしっかりと説明をし指示に従うこと、また119番へ電話をし感染(陽性)の可能性が高い該当者の状態を詳しい説明をし、その指示を仰ぎ従うこと。該当者が自宅へ一人で帰ることができるのか、帰ることが可能であれば公共交通機関を使用してよいのか、不可能な場合はどうしたらよいのか。該当者はただちに入院の措置をとって方がよいとわたしたちが判断した場合119番への電話をし事情を説明すれば救急車を寄こしていただけるのか。わたしの思いつくかぎりの粗雑な対処法だが保健所の職員さんに伝えた。
 
 職員さんは、それでほぼOKだと返事をしてくれたが、

(1)その稽古場で、クラスターの発生の高いので、後日(どのような【三密】の状態で稽古が行われていたのか)該当者の症状と稽古場の状態の事情聴取、その時点で稽古場にいた人びと全員のPCR検査、追跡調査を行いたいので稽古場内にいたすべて人々の名前、住所、電話番号の名簿を提出して欲しい。
 
 (2)また119番への電話の際、該当者がコロナの陽性者の可能性が高いことを話すことを忘れないように付け加えて下さい。

 コロナ禍のなかで芝居の稽古を継続するとは、検温、マスク、手洗い、うがいを徹底してもだれでも、どこでもこういう場面に遭遇する可能性がある。主宰者としては稽古場での俳優の健康状態の管理や消毒等の励行に充分に注意を払わなくてはいけないが、稽古場内でそういう事態に遭遇したら、わたしは上のような措置を速やか執れるだろうか。ほんとうのところわたしは心許ない気がする。慌ててしまう自分が眼に見えるので、それを防ぐためにも質問をさせていただいた。
 
 現行の状態で稽古を継続するのは不安でいっぱいで、このコロナ感染に対する不安を取り除くことはできず、不安はやがて知らず知らず人びとのなかで過敏な恐怖感へ変わっていく。これも防げない問題としてあらわれてくる。
 
 新型コロナウイルス感染症に関する一般相談窓口(東京都福祉保険局:新型コロナ・コールセンター:電話番号:0570-550571)へ電話をかけてみようかと思ったが、やめた。
 今年の11月に公演を実行した村田与志行さん(ボタタナエラー)、来年春に公演を予定している舘智子さん(タテヨコ企画)、わたしはこのお二人と長いお付き合いをさせていただいているので、両劇団に稽古場や公演の詳細な具体的にコロナ感染防止対策の模様を聴き、そのあとで保険所、厚労省へ電話をしてみても遅くないと思ったからだ。
 上野ストアハウスの木村さん、紀子さん、小形さんも、『いちばん危ないのは劇場より稽古場の【三密】で、手洗い・消毒は時間の経過とともに疎かになることが怖いのです。馴れが感染を蔓延させるのです』と話してくれていた。わたしたちにとって芝居の継続のためには、感染拡大予防対策を本気でしっかり実行するしか他に途はない。コロナ感染拡大の前では、わたしたちは受け身であることは確かなことだからだ。
 
 
 
           【 2 】 研修会を終えて
 
 
 今回の研修会を医学のことなんかなんにも知らない素人の身で「コロナ感染拡大防止対策」の勉強をしてみようと思いたったのは、今年(2020年)6月に企画していた公演がコロナの感染拡大で中止の決断せざるをえなくなったことがきっかけになっている。さらにいえば、わたしたちの貧弱な資金力でなんとか借りられる稽古場(荒川区の公共施設)がコロナの感染拡大防止対策で4月のはじめには区のひろば館の全館の緊急閉鎖が決まり、稽古ができる場所をわたしたちは喪ってしまった。この措置は、公共施設としてはコロナの感染拡大防止対策の実行上当然の措置だと思う。
 
 有名な大劇団や人気の俳優さんを抱えている劇団は別だが、じぶんたちで少しずつお金を出し合い貧しい資金で芝居を作っている無名の小集団が、集まる場所を喪うということはほとんで致命的な意味をもっている。たぶんわたしたちのように「同人誌」的な小さな規模で劇団運営をしている小集団なら同じような結果を背負うことになる。そんな私的な事情もあって、わたしは(医学のことはまったくわからないが)「コロナ感染拡大防止対策」、つまり素人としての【予防医学】の一般常識的な習得に限定化すれば、わたしのような迂闊者でも勉強の余地があるのではないかと「研修会」を思い立った。
 
 
 そして三ヶ月に及ぶ「研修会」の結果からわたし(たち)は果たしてなにを得たのかと自問すると、ほんの少しだけ「コロナ感染拡大防止対策」について知り得た気がするが、実はその知識は無いよりは在った方が良いといった程度の常識的な事柄で、わたしに限っていえばなにも得るものはなにもなかったと思っている。でも、それははじめから解っていたことだからいまさら嘆くこともないと思っている。
 
 正直にいって真に得たものは<空虚>だけだった。この<空虚>はわたしの心身を無駄に大きく深く疲労困憊させたが、疲労したぶんだけ「研修会」をやってよかったとも本気で思っている。「研修会」をやらなかったとしたら<空虚>さえも得られなかったに違いからだ。この世界でなにかを行動するとは<空虚>に耐えることに他ならないという鉄則を老齢になって再び確認しただけのことだ。そしてこの<空虚>は、一本の芝居を作ったくあとにやってくる<空虚>にとてもよく似ていると思った。
 研修会を終えるにあたって、いまは心のなかを覆う雲の隙間から青空がほんの少し顔をのぞかせている。「研修会」を子供の頃に遊んだ「双六」に喩えると、いくら賽子を振っても「振り出し」の位置から一歩も前へ進められない、前へ進めたとしても「一歩下がる」という処にしか立てず、前へ進むどころか駒を下げざるをえなくて永遠に「上がり」へ辿りつくことができない、そんな感じの「双六遊び」だ。
 
 わたし(たち)馬鈴薯堂は、来年の初夏7月に芝居の公演を企画している。その時は、社会の状況をよくよく見極め、お医者さんの示す感染予防のガイドラインを遵守し、しかし最後にはじぶんで考え判断し、行動を起こさざるをえないと考えている。わたしたちみたいな凡庸でマイナーな職能集団でも試行し模索したいことは少しはもっていて、その途を歩むしかないと覚悟をしている。
 
 
 最後になってしまったが、上野ストアハウスの木村真悟さん、奥様の紀子さん、小形知巳さん、それと舞台照明家の吉嗣敬介さんへの<講演&対談&インタビュー>、その二つの企画がもし無かったら、この「研修会」のレポートは中身の具のカレーを入れ忘れたカレーパンみたいにほとんど無内容で空疎なものになってしまっていた。お二方の<講演&対談&インタビュー>のお陰でなんとか格好を付けていただいたような気がしている。改めてお二方にお礼を申し上げます。
 本当にありがとうございました。
 また市川敬太(劇団ステア)さんにはICT技術を初歩を教えていただき、講演の度に撮影・録画を担当していただいた。
 本当にご苦労さでした。ありがとうございました。
 
 
      菅間馬鈴薯堂・菅間勇 令和二年十二月二十一日
 
 全参加者    
舘 智子(タテヨコ企画)   
西山 竜一(タテヨコ企画)   
加藤 和彦(タテヨコ企画)   
市川 敬太(劇団ステア)   
河内 拓也(劇団ステア)   
村田 与志行(ボタタナエラー)   
瀧澤 孝則((HUSTLE MANIA)   
加古 みなみ(オフィスチャープ)   
シゲキ マナミ(フリー)   
比嘉 麻琴(ソラカメ)   
稲川 実代子(菅間馬鈴薯堂)   
星谷 章(菅間馬鈴薯堂)   
菅間 勇(菅間馬鈴薯堂)   
 
 
 
        
 
 
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